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渡邉正己
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線生物学分野
放射線の生体影響は、主としてGyレベルの線量を数分間で照射するという、比較的、高線量かつ高線量率の条件下で行われ、その結果から、生体は20cGy以下の線量の放射線被ばくにほとんど応答しないと考えられていた。しかし、近年の分子生物学的手法および照射装置の進歩によって総線量がcGy以下の低線量や1日1cGy以下の低い線量率の被ばく影響に関する研究が可能となった。その研究によって、メ生体は、低線量放射線に対し生命維持のために備えている基本的仕組みを巧みに利用して、積極的に応答しているモことが明らかにされつつある。加えて、その応答の質と量が発がんや突然変異の誘導頻度に影響する可能性が指摘されるようになった。これらの事実は、低線量・低線量率放射線の生体影響研究が、原爆被ばく生存者や放射能汚染地区居住者に予想される様々な生体影響に対する医療活動を科学的側面から支援するものであるとともに、科学的にメ生命の起源に迫るモことができる新しい研究領域であることを意味している。本講演では、世界における低線量放射線の生体影響研究の現状と課題を紹介するとともに、長崎大学がCOEプロジェクトで展開しようとする低線量放射線影響研究の計画を紹介する。 |