セミナー放射線医療国際コンソーシアムセミナー

 
放射線の人体影響:甲状腺分子疫学調査の新展開


山下俊一
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科分子診断研究分野


20世紀の後半は、核開発競争から東西冷戦構造の崩壊に終えました。そして、21世紀初頭はアメリカの一極主義が益々顕著となりつつあります。医学研究の分野でもEBMや特許、新薬開発問題を含めその傾向は強くなり、強大化した資本力と多国籍事業の勢力が世界を席巻しつつあります。まさにグローバリズムの台頭です。原爆被災後の長崎における放射線医療科学研究や、従来からの日本の放射線影響研究の成果が、世界に通用するか否かもこれからが正念場です。

平成14年度採択された長崎大学の21世紀COEプログラムでは、(1)放射線生命科学の最先端研究、(2)国際ヒバクシャ情報ネットワークの整備活用、(3)原爆医療科学、チェルノブイリ分子疫学研究、セミパラチンスク医療科学の推進が『放射線医療科学国際コンソーシアム』構想の柱となっています。人材交流と人材育成の方向性の中で、長崎大学が拠点となりこれら世界の放射線影響学の推進的役割を演じる予定です。チェルノブイリおよびセミパラチンスクにおける経験を基に、これから基礎研究やフィールド研究を目指す若い人を対象に、甲状腺がんを中心とした臨床から基礎までのお話をします。