セミナー放射線医療国際コンソーシアムセミナー

 
グルタチオン関連酵素の細胞内局在と
アポトーシスシグナルに及ぼす影響の検討


近藤宇史
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科分子情報制御研究分野


酸化ストレスに応答する細胞の機能の中で、グルタチオンとその関連酵素は単に抗酸化機構として作用するばかりではなく、レドックス制御を通してシグナルの調節にも関わっている。今回は特に解毒酵素グルタチオンS-トランスフェラーゼの細胞内局在の変化と、レドックス制御因子グルタレドキシンが酸化ストレスに対応してアポトーシス及び抗アポトーシスシグナルにどのように働くのかについて最近のデータを紹介したい。

グルタチオンS-トランスフェラーゼは通常細胞質内に存在しているが、酸化ストレスを受けた細胞では、この酵素を核内へ移行させる。核内移行を阻害させた細胞では、酸化ストレスによるアポトーシスが増加することから、核内グルタチオンS-トランスフェラーゼがDNA障害の防御に働いていることが明らかである。幾つかの酸化ストレスによるその変動の意義を述べる。

グルタレドキシンはチオレドキシンスパーファミリーの一つで、グルタチオンを基質として標的タンパクのSH基修飾を介してタンパク機能を制御している。酸化ストレス下でのこのレドックス因子の働きを検討しているので、その一端を述べる。