プロジェクト:放射線障害・再生医療

 
目的 メンバー 事業計画 活動報告

目的

放射線被ばく後, 数日〜数ヶ月内に生じる急性放射線障害は、原爆による死亡の最大要因であった。種々の臓器障害が重層的に生じてくるが、中でも骨髄障害、消化管障害、皮膚障害が重要であり、1998年の茨城県東海村で起きたJCO事故では中性子線の高線量被ばくにより多臓器不全で2名の従業員が死亡したことは記憶に新しい。現在、急性骨髄不全に対しては、造血幹細胞移植が実施されある程度の効果を上げることができる。しかし、消化管障害・皮膚障害を克服する有効な治療法はなく、これらの臓器の移植療法はいまだ不完全であり、今後、再生医療の基礎的研究の進展と臨床応用が必須である。本プロジェクトでは、国際コンソーシアム運営会議メンバーと共に、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科において再生医療研究に取り組んでいる教官により「再生医療研究会」を立ち上げ、各種臓器の再生医療の確立を目指す。附属病院輸血部内に細胞工学室を立ち上げ、再生医療の臨床応用に備える。

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メンバー

朝長 万左男* 大学院医歯薬学総合研究科附属原爆後障害医療研究施設分子治療研究分野教授
長井 一浩 医学部・歯学部附属病院輸血部講師

*プロジェクトリーダー

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事業計画

受精卵由来の胎生幹細胞(ES細胞)株や骨髄に存在するといわれる成体多能性前駆細胞(MAPC)株など、多臓器への分化能を持つ細胞の試験管内増幅とその自由な分化誘導が可能となれば、急性放射線障害を克服できる再生医療の臨床応用の理論的基盤を形成できる。このような再生医療は、未だ基礎研究段階にあり、わずかに骨髄細胞による血管再生医療が臨床的に応用され、効果を上げ始めている段階である。基礎研究、前臨床試験、展開医療、臨床応用を共同で推進する。肝・膵などの内胚葉臓器、造血器・心筋・骨格筋・骨・軟骨・血管・皮膚などの間葉系臓器、神経細胞などの外胚葉臓器の再生を目指して基礎研究を展開すると共に、自家骨髄細胞による血管再生医療の臨床応用を平成16年度内に開始する予定である。


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活動報告

2003年8月16日に第1回「医歯薬学総合研究科―再生医療研究会」を開催し、約60名の参加により、多種臓器の再医療研究への取り組みの状況報告を行った。既に150例を超える臨床応用が行われている同種・自家骨髄移植療法の効果、神経幹細胞培養によるニューロン再生の実験的研究、骨・軟骨・歯芽・歯茎再生の基礎研究、肝幹細胞の培養実験等の成果が発表され、今後の再生医療の推進のあり方について活発な議論が行われた。第2回研究会を2003年12月9日に開催し、具体化すべき共同研究について討議する。


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