原爆・ヒバクシャ医療部門
血液内科学研究分野(原研内科)
教授 宮﨑 泰司
私たちの教室は、原爆被爆者に発生する後障害(慢性期の障害)の診断、治療、研究を主たる目的として1965年に当時の長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設の治療部門として創設されました。被爆者に白血病が多発したことなどにより血液内科として診療を行うようになり、現在では長崎大学原爆後障害医療研究所の臨床部門の一つとして血液内科学と被爆者の診療・研究を中心に活動を続けています。長崎大学病院では血液内科として、県内血液疾患診療の中心となり、高度医療の提供にあたると同時に新規治療法や新薬開発にも力を注いでいます。多数の臨床研究にも参画しており、全国レベルの多施設共同研究を強力に推進する一方で、患者さん一例一例から得られる問題を詳細に検討して新たな病態を解明し、その結果を診断・治療へと繋げる努力を重ねています。
こうした診療、研究面での活動に加え、学生、大学院生、研修医、修練医、そして内科医や血液内科医と、様々なレベルでの人材育成が極めて重要だと思います。現在の医療、研究に携わる専門医を育てると同時に、次世代を育むことが求められていますし、それは教室、ひいては大学やこの分野の活性化にも繋がると信じています。
血液内科の領域では重症の患者さんも多く、造血幹細胞移植に代表されるように高度な知識と経験を求められる診療が行われています。こうした治療の実践には幅広い医学知識と経験ばかりでなく、それらを統合することも必要です。そのため医師ばかりではなく、看護師、薬剤師、臨床検査技師など多職種の医療スタッフがチームとしてトータルケアを実践するよう務めています。血液学という専門領域に精通すると同時に全身を診る血液内科医、個人の能力を発揮しつつチーム医療に貢献できる医師、そういった血液内科医を育てていきたいと考えています。
これから医療は大きな変化を遂げるでしょう。社会の高齢化、医療費の高騰、医師の偏在など様々な問題があるなかで、ゲノム検査の実用化、再生医療の臨床応用、新薬の開発ラッシュなどなど、医学、医療の領域での進歩は加速しています。軸足をしっかりと目の前の患者さんにおき、同時にこうした変化に合わせて自らも進化し続ける必要があります。一方で、長崎から世界を見据えつつ、血液疾患の診療、研究、そして医学生、大学院生、若手医師の教育に取り組む私たちの姿勢は変わりません。これまで同様、教室の皆さんと長崎から世界に向けて新たな血液学の発信を目指したいと思います。