RIとは何か?


アイソトープ(同位元素・同位体)

原子はその中心にある原子核と、原子核の周囲の軌道を回っている電子からできています。さらに原子核は、正の電荷を持った陽子と、電気的に中性な中性子とからできています。
陽子数は原子番号、陽子数と中性子数の和は質量数として表されます。例えば、水素原子は原子核に陽子を1個持っているだけで、中性子は持っていませんので、 原子番号1.質量数も1となります。元素記号の左上方に標記された数字が質量数を示します。
アイソトープとは、陽子の数が同じで、中性子の数が異なっている原子の仲間のことです。
下の図に示すように、水素原子の場合には、重水素、トリチウムがアイソトープとなります。

ラジオアイソトープ(放射性同位元素)

ラジオアイソトープ(RI)とは、アイソトープのうち、放射線を出して他の種類の原子核に変化するアイソトープのことを指します。 また、このように放射線を出して他の種類の原子核に変化することを、「壊変」と呼びます。崩壊形式には大きくわけてα、βの2種類があり、どの壊変形式によるかは、 原子の種類により異なります。
α壊変ではヘリウム原子核が放出されます。ヘリウムの陽子数は2、中性子数は2ですので、α壊変を起こした原子は陽子数(原子番号)が2、陽子+中性子数(質量数)が4減少します。下の例では、ラジウム-226がα壊変を起こしてラドン-222に変化します。また、この時放出されるヘリウムの原子核をα線と呼びます。
α壊変ではヘリウム原子核が放出されます。ヘリウムの陽子数は2、中性子数は2ですので、α壊変を起こした原子は陽子数(原子番号)が2、陽子+中性子数(質量数)が4減少します。下の例では、ラジウム-226がα壊変を起こしてラドン-222に変化します。また、この時放出されるヘリウムの原子核をα線と呼びます。
β壊変では1個の中性子が陽子と電子に変化し、電子が放出されます。その結果、質量数は変わりませんが、陽子数(原子番号)が1つ増えた原子に変化します。下の例では、トリチウムがヘリウム-3に、リン-32がイオウ-32に変化します。このとき放出される電子をβ線と呼びます。
壊変の後などで励起状態にある原子核が、電磁波を出して安定状態に移ることがあります。この時の電磁波をγ線と呼びます。 例えばヨウ素-125やクロム-51があります。

放射能の単位

放射能の強さは、単位時間あたりの壊変数によって表すことができ、1秒間あたりの壊変数を1Bq(ベクレル)と呼びます。 かつてはCi(キューリー)という単位が使われ、今でも論文で見かけることもあります。RIを購入するときは、一般の試薬のようにmgやml単位で購入するのではなく、 Bq単位で発注・購入します。
1秒間あたりの壊変数はdpsと呼ばれることもあります。つまり1Bq=1dpsとなります。また、その60倍、すなわち1分間あたりの壊変数はdpmと呼ばれます。
放射能を放射線検出器で測定する際に用いられるのが、cpsという単位で、これは1秒間あたりの計数値を意味します。1分間あたりでは、1cpmと呼ばれます。 汚染検査の際にはRIから放出されるすべての放射能を放射線検出器で測定するのは困難です。そのため、一般にcpsとdps間にはcps<dps(Bq)という関係があり、 cpsx100/dpsは計数効率と呼ばれ、放射線検出器の性能をあらわす指標として用いられます。

比放射能

Bqとともにカタログや論文で見かける単位に、比放射能(specific activity)があります。これは一般にBq/molで表され、 RIで標識された化合物の単位質量あたりの放射能を意味します。同じ核種で標識された同じ化合物であっても、実験系によっては異なる比放射能を持つ標識化合物を用いることもあります。
比放射能が高い標識化合物を使うと、一般に測定感度は向上しますが、次のような点に注意しておく必要があります。
細胞や動物の正常な代謝機能が阻害される。
化学的に取り扱う量が少なくなるので、定量が不正確になりやすい。
容器壁などへの吸着や溶液の不均一が生じやすい。