どのような核種をどのような用途に用いるのか?


どのような核種をどのような用途に用いるのか?

アイソトープ総合センターで用いられている代表的な核種について、性質、注意事項、アプリケーション例などを紹介します。

※「使用実験室」「1日/年間最大使用数量」は当施設の室名と限度量を表しています。

■■■■3H (三重水素、トリチウム)■■■■
放射線 β線
半減期 12.33年
エネルギー 0.0186MeV
遮蔽 不要
汚染検出法 ガスフロー(フロアモニター)またはスミア法
測定法 オートラジオグラフィー(ラジオルミノグラフィー)
液体シンチレーションカウンター
計数効率 約60%(液体シンチレーションカウンター)
使用実験室 生化学実験室、培養室、動物実験室、P2、P3
1日最大使用数量 2GBq
年間最大使用数量 40GBq

エネルギーが低いので、遮蔽の必要はありません。
エネルギーが低いので、使い方の簡単なGMサーベイメータや、退出時に使うハンドフットクロスモニタでは、汚染の検出ができません。 したがって、標識物をこぼさないような細心の注意が必要です。
ラジオルミノグラフィーも可能ですが、トリチウム専用のイメージングプレートを使う必要があります。
他の核種による標識化合物と比べて、比放射能が高く、自己分解しやすい性質があります。したがって、半減期は長いですが、化合物としての使用期間は1年程度が目安です。

【アプリケーション例】

■■■■14C (炭素14)■■■■
放射線 β線
半減期 5730年
エネルギー 0.156MeV
遮蔽 不要
汚染検出法 ガスフロー(フロアモニター)またはスミア法
測定法 オートラジオグラフィー(ラジオルミノグラフィー)
液体シンチレーションカウンター
計数効率 約90%(液体シンチレーションカウンター)
使用実験室 生化学実験室、培養室、動物実験室、P2、P3
1日最大使用数量 200MBq
年間最大使用数量 10GBq

エネルギーが低いので、遮蔽の必要はありません。
エネルギーが低いので、使い方の簡単なGMサーベイメータや、退出時に使うハンドフットクロスモニタでは、汚染の検出ができません。 したがって、標識物をこぼさないような細心の注意が必要です。
ラジオルミノグラフィーも可能ですが、トリチウム用のイメージングプレートを使う必要があります。
半減期はきわめて長く、自己分解もさほど大きくありません。使用期間は、化合物自体の安定性によります。

【アプリケーション例】

■■■■32P (リン32)■■■■
放射線 β線
半減期 14.26日
エネルギー 1.711MeV
最大飛翔 720cm(空気中)
遮蔽 必要。1cm厚以上のプラスチック。
鉛等の金属は適さない。
汚染検出法 GMサーベイメータ
測定法 オートラジオグラフィー(ラジオルミノグラフィー)
液体シンチレーションカウンター
計数効率 95%以上(液体シンチレーションカウンター)
約50%(チェレンコフ測定)
使用実験室 分子生物実験室(1)及び(2)、培養室(1)、
動物実験室
1日最大使用数量 400MBq
年間最大使用数量 30GBq

生化学分野の研究に使用されている放射性核種の中では、最もエネルギーの高いβ線を放出します。
そのため、しっかり遮蔽し、たとえ数10KBqでも飛散させてしまったときは、出来るだけ早く処理してください。
高エネルギーβ線と金属原子が衝突すると、制動放射線(X線)が発生するため、金属を遮蔽に用いることはできません。
GMサーベイメータで容易に汚染を検出することができます。作業前後の汚染検査を忘れずに!
無機リンによる細胞の標識など、多量の32Pを用いる際は、事前に必ず管理室に申し出てください。
エネルギーが高いため、シンチレーションカクテルを用いずに、放射活性を測定(チェレンコフ測定)することができます。
アイソトープ総合センターの液体シンチレーションカウンターでは、設定番号「7」がチェレンコフ測定です。
半減期が短いですので、しっかりと使用計画を立てた上で、発注しましょう。[α-32P]-dCTPや[γ-32P]-ATPなど、よく用いられる化合物の場合、 午後2時までに発注すると翌朝には納品されます。

【アプリケーション例】

■■■■35S (イオウ35)■■■■
放射線 β線
半減期 87.51日
エネルギー 0.167MeV
遮蔽 不要
汚染検出法 ガスフロー(フロアモニター)
スミア法
測定法 オートラジオグラフィー(ラジオルミノグラフィー)
液体シンチレーションカウンター
計数効率 約90%(液体シンチレーションカウンター)
使用実験室 生化学実験室、培養室
動物実験室、P2、P3
1日最大使用数量 200MBq
年間最大使用数量 40GBq

エネルギーが低いので、遮蔽の必要はありません。
エネルギーが低いので、使い方の簡単なGMサーベイメータや、退出時に使うハンドフットクロスモニタでは、汚染の検出ができません。
したがって、標識物をこぼさないような細心の注意が必要です。
ラジオルミノグラフィーも可能ですが、トリチウム用のイメージングプレートを使う必要があります。
標識アミノ酸は、-20°以上の温度での保存、および凍結融解の繰り返しにより自己分解が速まります。1回で使用してしまわない場合は、小分けして-80°で保存してください。
標識ヌクレオチドも、-80°保存が好ましいと考えられます。しかし-20°においても、3ヶ月以内であれば、nick translationとsequence反応における性能低下は起こらないようです。

【アプリケーション例】

■■■■125I (ヨウ素125)■■■■
放射線 γ線(電子捕集)
半減期 59.41日
エネルギー 35.5keV(6.7%)、27.5keV(Te KX-rays)
遮蔽 必要。
0.25mm以上の鉛。専用遮蔽板あり。
汚染検出法 125I専用サーベイメータ
測定法 オートラジオグラフィー(ラジオルミノグラフィー)
ガンマカウンター
使用実験室 高レベル実験室、P2、P3、動物実験室
1日最大使用数量 100MBq
年間最大使用数量 10GBq

透過力の高いγ線放出核種です。必ず専用の遮蔽板を用いてください。
4Fフロアで作業してください。また標識化合物を分注、配分する際にも、2階の配分室ではなく、4階高レベル実験室のドラフトを使用してください。 NaI水溶液などでイオン化しているヨウ素には揮発性があります。
さらに標識化合物を酸性にしたり、冷凍保存しても、揮発性のヨウ素に変化します。
例えば、放射能濃度が高い[125I]-NaI溶液を不用意に開封すると、~74Bqもの微滴が空気中に飛散します。
飛散したヨウ素は速やかに甲状腺に摂取され、低レベルの[125I]でも甲状腺に大きな被ばく線量を与えます。
したがってこのような標識化合物の入ったバイアルは、必ずドラフト内で開封してください。 ヨウ素による標識反応を行なうなど、放射性ヨウ素を1日最大使用数量の1/3以上([125I]は33MBq、[131I]は10MBq以上)用いる場合は、下記のような制限を設けていますので遵守してください。
作業届記載時に管理室(担当:高尾)に申し出、使用許可を得る。
作業は原則として時間内(9時~17時)に行なう。やむを得ず時間外に行なう場合は、理由書を管理室に提出する(書式は管理室で準備する)。 高レベル実験室の125Iガスモニタのフィルター交換を下記のように行なう。

プレフィルター⇒毎週末(金曜)に管理室職員が交換する。
チャコールフィルター⇒月~金の間は朝に管理室職員が交換する。土日および休日は利用者が利用時に交換する。
フィルター交換時は、チェックリストにその旨を記録する。

【アプリケーション例】