どのようにして実験データが得られるのか?
放射活性の測定
最終的に得られた試料中の放射活性を定量するには、β線放出核種の場合には液体シンチレーションカウンターを、γ線放出核種の場合にはガンマカウンターを一般的に使います。
いずれも放射線の蛍光作用を利用したものです。
液体シンチレーションカウンターでは、専用のバイアル中に放射性試料を移し、これをシンチレーションカクテルとよく混和した後、カウンターにセットします。
試料は液体でも、またメンブレン・フィルターのような薄い固体でも測定できます。
ガンマカウンターでは、専用のバイアル中に放射性試料を入れ、そのままカウンターにセットしてください。
32Pの場合にはエネルギーが高いため、シンチレーションカクテルを用いずに直接放射活性を測定(チェレンコフ測定)することができます。
アイソトープ総合センターの液体シンチレーションカウンターでは、設定番号「7」がチェレンコフ測定です。
測定後の廃液は、放射性有機廃液として処理してください。

計数率
液体シンチレーションカウンターやガンマカウンターで得られる測定値は、計数率(cpmまたはcps)として表示されます。
この計数率を計数効率(e)で割ることにより、絶対的な放射能の単位に変換することができます。
cps x 100/e = dps = Bq
cpm x 100/e = dpm
計数効率は、核種の放出するエネルギー、測定器の性能、クエンチング(消光作用)の程度により異なります。 各核種における計数効率は一般には下図のようになります。

放射活性の可視化
組織標本中の標識化合物の局在や、電気泳動ゲル中の標識化合物のバンドの位置は、
放射活性を可視化することにより知ることができます。
放射活性を可視化するには、その写真作用を利用して、乳剤やX線フィルムを感光させ、現像後観察するという方法が長い間使われてきました。
この方法では分解能の高い像を得ることができますが、感光に時間のかかること、暗室操作が必要であること、そのままでは定量化できないことなどの欠点もあります。
最近、ラジオルミノグラフィという手法が急速に広まっています。これは再使用可能なイメージングプレート(IP)と放射性試料を密着させ、放射線エネルギーを保持させた後、
そのエネルギーに依存してレーザー走査により生ずる蛍光を検出するものです。こうした機器により、データは画像ファイルとして得られ、機器に組み込まれたアプリケーションソフトにより、定量化など画像解析に供することができます。
また出力は、ピクトログラフィにプリントすることもできますし、PICTなどの汎用フォーマットにEXPORTして、各研究室のレタッチソフトで解析することもできます。
X線フィルムを使う方法と、イメージングプレートを使う方法のその他の点の比較は下記の通りです。
X線フィルム | イメージングプレート | |
感度 | 低い | 高い(X線フィルムの100倍) |
分解能 | 高い | 低い |
定量性(定量範囲) | 低い(103) | 高い(105) |
暗室捜査 | 必要 | 不要 |
感光時間 | 長い(2日~) | 短い(2時間~) |
再使用 | 不可能 | 可能 |
なお、3Hなど放出エネルギーの低い核種を用いる場合には、専用のIPを使う必要があります。