長崎大学原爆後障害医療研究所 腫瘍・診断病理学分野(原研病理)

病理診断について

病理診断とは

病理診断は、患者さんから採取された組織や細胞を顕微鏡で観察し、病気の有無や種類、進行度などを評価する医学的診断手法です。診断結果は、正確な治療方針の決定や、再発・予後の予測などに役立てられます。診断を担当するのは、病理学を専門とする「病理医」です。

原研病理における診断への取り組み

1. 組織診
患者さんの手術検体や生検検体から、HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色標本を作製して診断します。必要に応じて特殊染色、免疫組織化学染色や分子病理学的検査も行い、分子生物学的知見を加味した精度の高い病理診断を提供しています。
2. 細胞診
甲状腺、尿、子宮頸部擦過検体などから採取された細胞を顕微鏡で観察して診断します。細胞診専門医と、細胞検査士資格を有する臨床検査技師が連携して診断を行っています。
3. 術中迅速診断
手術中に提出された検体を急速に凍結し、標本を作製して約10分程度で診断を行います。この結果は、手術中の方針決定に直接反映され、より適切な外科的治療に貢献します。
4. 病理解剖
不幸にしてお亡くなりになられた患者さんに対し、ご遺族の承諾のもとに解剖させていただきます。病気の進行状況、生前診断の妥当性、治療効果や死因を評価します。病理解剖の結果は、臨床医学・研究・教育への貴重なフィードバックとなり、医療の質の向上と学術的発展に寄与します。
5. 分子病理診断
従来の形態学的診断に加え、採取された検体の遺伝子・分子レベルの解析を行います。これにより、診断が困難な症例や組織亜型の識別、治療や予後につながる情報等を提供します。

病理標本作製の流れ

① 組織採取

内視鏡的生検、手術や病理解剖で検体を採取します。

② 固 定

ホルマリンで組織を固定し、変性を防ぎます。

③ 切り出し

病変の部位を肉眼で確認し、必要部分を切り出します。

④ 包 埋

アルコール、キシレンを通してパラフィンに浸透させ、パラフィンブロックにします。

⑤ 薄 切

ミクロトームで組織を薄くスライスし、スライドガラスに貼り付けます。

⑥ 染 色

HE染色を基本に、必要に応じて特殊染色、免疫染色も行います。

⑦ 顕微鏡観察

病理医が顕微鏡で観察し、診断を行います。

以下の写真は、切り出し、包埋、薄切、染色、ガラス標本、顕微鏡観察の様子です。

切り出し
切り出し
包埋
包 埋
薄切
薄 切
染色
染 色
ガラス標本
ガラス標本
顕微鏡観察
顕微鏡観察

地域医療への貢献

原研病理では、長崎大学病院を中心に、JCHO 諫早総合病院、国立長崎医療センターなどの関連医療機関や地域病院からの病理診断依頼を受け、専門医を派遣・連携しています。質の高い病理診断を通じて、地域医療の向上に貢献しています。
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