平成22年度病理各論Ⅱ脳神経系の試験結果について、
得点集計は次の通りです。


満点は1名、60点に満たない不合格者は4名でした。
正答率の低かった問題について解説します。
問4 次の脳腫瘍の組織像(HE染色)から病理診断名を記し、診断根拠となる組織所見を選択肢より2つ選べ。

病理診断名は、乏突起膠腫Oligodendroglioma、
組織所見はb)細胞の輪郭は明瞭とe)分岐、吻合を示す毛細血管であり、
それぞれhoney-comb structureやfried-egg appearanceとchiken wire patternに相当します。
問7 下記の循環障害についての記載のうち正しい組み合わせを選択肢より選べ。
① 動静脈奇形による脳出血では脳の変形が比較的少ない
② 出血が新鮮な場合、血腫周辺の脳実質は鉄錆色を呈し硬度が増す
③ くも膜下出血は先天性嚢状動脈瘤の破裂によるものが多い
④ 急性硬膜下血腫では中大脳動脈の破綻によるものが多い
⑤ 慢性硬膜下血腫では肉芽性被膜を形成する
解答はbの①③⑤です。
AVMの破裂による脳出血では脳の変形が比較的少ないし、急性硬膜下血腫では、静脈洞と脳表面の静脈を連絡する架橋静脈や脳表の小血管の破綻が原因として多い。
問9 次の脳の組織像(HE染色)から病理診断名を記し、病変について適当なものを選択肢より2つ選べ。

病理診断は脳出血であり、出血周囲にはグリアやマクロファージの出現といった組織修復反応は全くみられず、陳旧性でなく新鮮な出血であることが判る。
問10 次の進行性多巣性白質脳症(PML)の脳病理組織写真(HE染色)中の矢印①②で示す細胞の種類を、各々選択肢より選べ。

PMLではJCウイルスによる感染乏突起膠細胞および肥大星状膠細胞の出現と、脱随による泡沫状細胞の出現が病理学的特徴。①は肥大星状膠細胞であり②は泡沫状細胞を示す。
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