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教授就任12年にあたり
 
教授 中島正洋 長崎大学原爆後障害医療研究所
腫瘍・診断病理学研究分野(原研病理)
教授 中島 正洋

 2010年3月、この原研病理の主任を拝命して、12年が経ちました。教室ホームページの「教授あいさつ」を最後に更新したのは7年前の平成27年3月です。教授としての折り返し地点は既に過ぎ、この機会にこれまでの12年を振り返り、残りの任期に当たりたいと考えます。
 研究について:論文や学会発表の業績はこのHP中に掲載している通りです。この12年間で教室が主となり発表した論文は38編で、うち学位論文は9編含まれます。教室の研究テーマの柱は甲状腺を中心とする腫瘍病理学、原爆被爆者腫瘍・放射線関連発がん、新規分子病理診断指標研究で、この12年間変わっていません。現在進行中の研究課題は、1)甲状腺腫瘍内の組織構築の不均一性を分子病理学的に説明すること、2)「長崎被爆者腫瘍組織バンク」試料を用いた網羅的遺伝子解析による放射線誘発変異の特徴を発見できるか、またラット放射線誘発甲状腺癌モデルによる被ばくの分子指標を同定できるか、3)DNA損傷応答分子である53BP1は悪性腫瘍の普遍的な分子病理診断マーカーとなるか、というものです。これらの課題に関して学生や教員が学会発表し、病理学会学生発表賞、臨床内分泌病理学会研究賞、欧州病理学会の口演賞とポスター賞、国際臨床細胞学会のベストポスター賞、甲状腺学会研究賞と多数の表彰をいただいたのは今後の励みになりました。しかし、それぞれ難しいテーマであり、残念ながらまだまだゴールには程遠いと言わざるを得ません。今後も教室員と一緒に取り組み、甲状腺結節の病理診断への新提言、近距離被爆者腫瘍の遺伝子変異の網羅的解析、53BP1の病理診断への臨床応用の3つに挑戦していきたいと思います。
 病理診断について:先代からの県内の病院の病理診断に加え、令和2年度より長崎大学病院地域病理診断支援センターが創設され、我々が担当することになりました。長崎県病院企業団からの委託で、現在令和4年度は助教、助手、医員3つのポストを得て、五島中央病院、上五島病院、対馬病院の病理診断と大学病院の病理診断の一部を担当しています。さらに令和元年からは甲状腺専門病院の病理診断を担当しています。多数の甲状腺・副甲状腺病変の病理を経験する機会に恵まれた幸運に感謝します。甲状腺腫瘍病理の共同研究もさせていただいていて、教室にとっては財産です。教室の病理専門医の養成に必要な十分な病理診断体制(剖検数を含め)は数的にも質的にも整っています。実際、12年間で教室から3名の病理専門医が生まれ、現在2名が長崎大学病理専門医プログラムでの修練中です。令和2年11月現在、我が国の病理専門医数は2620名、長崎県は27名です。これは人口10万人あたり2.0名に相当し、全国平均2.1名と同等ですが、10名(37%)が65歳以上と高齢化が顕著です。我が国の病理診断件数は2005年の2,143,452件から2018年は4,614,585と約2.2倍に増加、術中迅速件数は同57,684件から228,754件(約4.0倍)、がんの治療を決定する免疫染色件数は同151,248件から426,276件(3.8倍)と急増しています(厚生労働省 大臣官房統計情報部調査)。これらの数字を見ても病理専門医の現状は不足していることが明らかです。患者さんへの正確な病理診断提供のため、初期研修から県内の病院と大学との連携で専門医を育成する体制が必要と考えます。研修指定病院の長崎医療センターや嬉野医療センター、諫早総合病院の病理診断科には、原研病理同門の病理医が常勤していて、その連携で長崎県内の病理医を増やして参ります。
 まとめ:この12年間で大学の運営体制、財政状況はドラスティックに変化しました。研究費獲得には常に競争力が問われるし、研究組織や教育プログラムはbuilt and scrapで新規性や革新性を持った改編が求められます。我々の所属する原爆後障害医療研究所は9年前(2013年)に大学附置研究所に改組され、6年前にはネットワーク型共同利用・共同研究拠点に認定されました。大学院専攻としては金沢・千葉大学との3大学共同の博士課程と福島医大との2大学共同の修士課程が新設され、原研の教室には多数の学生が所属して学んでいます。新型コロナのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻といった社会不安は突発的に発生し、教育や研究活動に大きな変化を強いてきます。我々の課程の学生には旧ソ連邦圏の留学生が多く、将来に不安を抱えながら学業の継続を望む学生が少なくありません。変化のスピードの著しい大学の研究・教育環境や社会情勢からの影響に対応しながら、教室主任としての任にあたるには、教室員というマンパワーの活用と教員の目的意識の新陳代謝を促していくことが必要と考えます。教授就任時には二人病理医の困難な時期もありましたが、現在まで多くの同門の先生、共同研究者、教室員、大学院生に支えられて、これまで業務をこなしてきました。私の教室主任としての職務は、若い人材が集まり、ともに学び成長し、活躍・貢献できる場を与えることです。それには教室員全員に目的を共有してもらう事と若い人材を育てようとする想い・愛情が必要です。残された任期で、教室員と共により良い教室を作っていきたいと思います。
令和4年4月



開講50周年に思うこと (平成27年3月)


近況報告 (平成25年4月)


原研創設50周年を迎えるにあたり (平成24年4月)


教授就任のあいさつ (平成22年3月)


教授プロフィール

 
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