[調査成績] |
1) |
永久歯萌出状態 |
a) |
胎内被爆児童と対照児童との比較
第1表 胎内被爆児童及対照児童との永久歯萌出率の比較 |
永久歯の種類 |
永久歯出齦
標準時期 |
胎内被爆児童
永久歯出齦歯数(20名) |
対照児童
永久歯出齦歯数(20名) |
中切歯 |
6…8年 |
上顎 |
右 4 (20%) |
上顎 |
右 6 (30%) |
左 2 (10%) |
左 5 (25%) |
下顎 |
右 14 (70%) |
下顎 |
右 15 (75%) |
左 15 (75%) |
左 15 (75%) |
側切歯 |
7…9年 |
上顎 |
右 1 (5%) |
上顎 |
右 |
左 1 (5%) |
左 |
下顎 |
右 3 (15%) |
下顎 |
右 5 (25%) |
左 3 (15%) |
左 4 (20%) |
第1大旧歯
(所謂6才旧歯) |
6…8年 |
上顎 |
右 16 (80%) |
上顎 |
右 15 (75%) |
左 15 (75%) |
左 16 (80%) |
下顎 |
右 18 (90%) |
下顎 |
右 19 (95%) |
左 19 (95%) |
左 18 (90%) |
一般に夛少遅延する様であるが、歯列の鍵と言われる第1大臼歯は上下顎共略々同率を示している。 |
b) |
生后被爆児童と対照児童との比較
第2表 生后被爆児童及対照児童との永久歯萌出率の比較 |
永久歯の種類 |
永久歯出齦
標準時期 |
生后被爆児童
永久歯出齦歯数(18名) |
対照児童
永久歯出齦歯数(18名) |
中切歯 |
6…8年 |
上顎 |
右 7 (39%) |
上顎 |
右 7 (39%) |
左 9 (50%) |
左 8 (44%) |
下顎 |
右 16 (89%) |
下顎 |
右 18 (100%) |
左 15 (83%) |
左 18 (100%) |
側切歯 |
7…9年 |
上顎 |
右 |
上顎 |
右 1 (6%) |
左 |
左 2 (11%) |
下顎 |
右 8 (44%) |
下顎 |
右 6 (33%) |
左 6 (33%) |
左 6 (33%) |
第一小旧歯 |
9…12年 |
上顎 |
右 2 (11%) |
上顎 |
右 |
左 |
左 |
下顎 |
右 |
下顎 |
右 |
左 |
左 |
第二小旧歯 |
11…14年 |
上顎 |
右 1 (6%) |
上顎 |
右 |
左 1 (6%) |
左 |
下顎 |
右 |
下顎 |
右 |
左 |
左 |
第一大旧歯
(所謂6才旧歯) |
6…8年 |
上顎 |
右 17 (94%) |
上顎 |
右 16 (89%) |
左 16 (89%) |
左 17 (94%) |
下顎 |
右 18 (100%) |
下顎 |
右 18 (100%) |
左 16 (89%) |
左 18 (100%) |
両者略々同率を示すが、茲に興味あることは、被爆児童2名に於て放射能による歯牙萌出の促進ではないかと想像される例があったことである。1例は生后10日目に爆心地より1900 mの地点で被爆、女、既に545萌出。他の例は生后30日目に2700 mの地点で被爆、女、5 萌出 |
2) |
カリエス罹患、歯齦縁炎、エナメル発育不全等について
第3表 |

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a) |
カリエス罹患は胎内児童の対照群に8歯(2人に於て)生后被爆児童に3歯(3人に於て)あり、胎内被爆児童及び生后被爆児童の対照群にはなかった。 |
b) |
歯齦縁炎は胎内被爆児童に3人、生后被爆児童に7人、生后対照群に2人見られた。歯槽膿漏は胎内被爆児童に1例(7ヵ月1000m)見たのみであった。 |
c) |
エナメル発育不全歯(奇形歯)は胎内被爆児に1例、生后被爆児に2例見られたが、これは今后に残された問題の一つであろう。
第4表 |
胎内被爆時の巨離(m) |
0~1000 |
1001~2000 |
2001~3000 |
3001~4000 |
4001~5000 |
5人 |
4人 |
8人 |
1人 |
2人 |
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生后被爆時の巨離(m) |
0~1000 |
1001~2000 |
2001~3000 |
3001~4000 |
4001~5000 |
3人 |
5人 |
4人 |
5人 |
1人 |
其他の異常、例へば兎唇、口蓋破裂、顎骨奇形等は1例も見られなかった。 |
以上記述したことは少数例で而も小学一年生のみの觀察であるから、ここに現われた成績が果して原爆の放射能による直接又は間接的の影響であるか否か即断することは出来ない。他方また被爆距離の関係、被爆時胎内日数、或は被爆時生后日数等の関係も明らかにされねばならない大切なことと思う。
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