原爆被災資料
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昭和27年原爆班研究報告


長崎大学医学部 眼科 広瀬金之助
 原爆研究班 長崎大学医学部眼科学教室 廣瀬金之助 

1. 母体の被爆が胎児の視器に與えた影響に就いての研究
目的: 妊娠中被爆し或は其の後間まもなく妊娠した母親から生れた子供が被爆によって如何なる影響を受けたかを調査する。方法から二つの項目に分ける
A. 被爆母親から生れた子供が本年4月學齢期に達したので此の者を集めて視器の調査を行ふ。同時に然らざる者をも調査して対照とする
B. 死産流産児視器の形態学的並びに組織学的調査。材料は病理学教室より得て被爆者及び非被爆者出生を区別し、其の眼異常を調査する
Aは其の第一回調査を27年末に行ふ豫定。Bは目下無腦児に就いて調査中であるが、未だ3体にすぎないので発表の域に達しない

2. 原爆による眼外傷
放射能に因る眼症殊に白内障の外、器械的及び熱火傷による視器の障害に就いて調査し、其の改善せしめ得るものを治療するのを目的とする。自発的に治療を希望して外来を訪ねる者の外、集團検査を行って患者を発見する

3. 放射能に因る白内障
A. 被爆者に認められる白内障
外来患者中の被爆者の外、被爆者を訪問して水晶体の検査を行ふ
B. 被爆者にて死亡せるものの水晶体の組織学的変化を鏡検する
C. 放射能による白内障の実験的研究
 X線による放射能白内障の実験的研究は相当行はれて居るが其の臨床像は相当進んだ時期のものを其の初発所見としている。我々が原爆白内障の初期と理解しているものは、之に比すればずっと以前のものの様に思はれる。斯様なものが動物実験で認められ、それが果して進んだ時期の放射能による白内障に発展するかどうか研究するのが目的である。
 家兎、白鼠を材料として、X線放射を行ひ臨床的には細隙燈顕微鏡で検し後、組織検索を行ふ

[これ迄に得た成績](報告)
  原子爆弾に依る眼外傷に就いて
   長大眼科学教室 廣瀬金之助 徳永次彦
   昭和27年8月20~30日に至る間、調外科教室で長崎被爆者の調査を行った時、来た患者の一部を調査した成績である。
 調査目的は原子爆弾に因る眼底変化、白内障、眼外傷(器械的)等である。放射能による白内障の有無は散瞳せしめず直像鏡微照法によるのみで、細隙燈顕微鏡検査は行はなかった。
 年齢及人数:8~20才―12人、21~30才―17人、31~40才-11人、41~50才―14人、51~60才-9人、61~73才―9人 合計72人
 原爆による眼障害 10名(13.9%)あり
 内譯:放射能白内障 2人(4眼)
  直像鏡微照法で後極部附近の小溷濁。眞に放射能によるものなりや否やは
細隙燈顕微鏡で確認する必要あり
  73才男 左眼 視力=0 角膜片雲、虹彩離断、虹彩輪状後癒着、外傷性白内障
65才男 左眼 視力=眼前手動 虹彩根部離断、外傷性白内障
25歳女 左眼 視力=0 虹彩輪状後癒着、外傷性白内障
42才男 右眼 視力=0 〇眼球、眼球亡失
8才男  右眼 視力=0 〇球、上下眼瞼外反
41才女 左眼 視力=0 眼球癆、瞼球癒着
54才女 瘢痕性外反(両)、兎眼性角膜炎(右)
26才女 上下眼瞼瘢痕(両)

所蔵 広島大学放射線医科学研究所
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