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昭和27年原爆班研究報告


長崎大学医学部 放射線科 宇宿誠五
 原爆児骨骼(前膊骨)のX線所見
     長崎医学会第28回総会
     昭和27年11月23日
  長崎大学医学部放射線科 濱里欣一郎

[研究目的]
 原子爆彈による放射線は中性子線、α線、β線、γ線、熱線等各種輻射線が一時に大量放射されるが、これ等混合輻射線に依る後期障害を小児の骨発育といふ面より調査し、長期に亘って観察する。

[研究方法]
 骨発育状態は
1) 前膊骨、上膊骨の骨端核および腕骨の出現頻度
2) 骨端核横径と骨端部骨径との比
3) 頭蓋長前膊骨長比
 の三項目を指標とした。
 前膊骨部X線寫眞は管球焦点を前膊中央に置き、掌側を上にして固定し、次の條件にて撮影、糎尺にて計測した。
 二次電圧…60 K.V.P 、二次電流…20 mA、時間…4秒
 焦点フィルム距离…1 m、増感紙なし

[研究業績]
 被検者は満6才~12才(被爆当時胎児~満5才)の小児で被爆児163名、対照233名に就て夫々比較した。
ⅰ) 骨増殖、萎縮、変形畸型、骨梁の変化は対照と同様異常は認めない。
ⅱ) 橈骨近位骨端核の出現頻度には両者の間に有意の差を認めない。
尺骨遠位骨端核:出現頻度に有意の差を認めない。
ⅲ) 上膊骨滑車骨核:出現頻度に有意の差を認めない。
ⅳ) 上膊骨内上髁核:出現頻度に有意の差を認めない。
ⅴ) 上膊骨外上髁核:出現頻度に有意の差を認めない。
ⅵ) 尺骨遠位骨端核の横径=b
     尺骨遠位端骨径=a
    b/a≧0.8 となるのは♂11才♀10才であるがこれも差は認めぬ。
ⅶ) 橈骨遠位骨端核の横径=b
     橈骨遠位端骨系=a
   b/a≧1.0となるのは♂、♀共に11才であるが、これも差はない。
 以上骨端核の出現頻度より見た場合、原爆児と対照児との間には推計学的には有意の差を認め得ない。

原子爆弾による皮膚障害  放射線科 施 焜山
終戦後第1回長崎医学会に於て発表
目的 原爆の爆撃に因って起る皮膚障害の追求
方法 被爆約6ヶ月に至る間の種々な症例の箇別的観察
全部で45名の患者の内代表的なもの及特殊なもの数例に就て詳しく観察を為した。
成績
例1. 殆んど全身にわたる表皮剥离
例2. 屋内に居た者で即発性小火傷及び潰瘍形成があった例
例3. 例2と同様な状態に居た者で遅発性潰瘍性火傷を生じた例
例4. 被爆翌日草刈を行った者に手及下腿部に湿疹様発疹を生じた例
例5.

2粁以上の巨离に居た者で爆撃時に灼焼塊状の物が飛来し足部に当り火傷及び潰瘍を形成した例

以上の諸例に就て其原因を考察し原爆によって起る皮膚障害は熱線のみならず其他の様々な輻射線及微粒子線或は爆発生成物質(放射性)が重要な役割を果たして居るものと考へられる。

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