長崎大学グローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」
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2008年オブニンスクバイオスクール派遣報告書 報告書


 2008年5月19日から23日にかけて、ロシア連邦オブニンスクで開催された2008年オブニンスクバイオスクール(8th International School on Modern Problems of Radiation Biology)に参加した。このバイオスクールは、オブニンスクにある医学放射線研究所サエンコ教授により企画されたもので、今年はロシア連邦内および周辺の国々から200名あまりの参加者が集う会になった。バイオスクールは19日から5日間の日程で開催されたが、第1日目のオブニンスク医学放射線研究所TSYB所長による開会式に引き続き行われた講義を担当した。第1日目の講義は2つの講義からなり、最初の講義を朝長教授が担当し、幹細胞と再生医療について約1時間半の講義を行った。引き続いて、2番目の講義としてATM依存的なDNA損傷情報の活性化と増幅について講義を行った。参加者の大半は英語が理解できるようであったが、少しでも理解を高めるためにという主催者側の配慮で、すべての講義内容についてロシア語への逐次通訳が行われた。
 参加者は若手の医師・研究者を中心に、中堅から年配まで幅広い年齢層で構成され、主に放射線の医療応用にかかわっているスタッフが多いという印象を受けた。講義終了後、活発な議論が展開され、その後もとりわけ若手の参加者との議論が長く続いた。オブニンスクの医学放射線研究所など、ロシア連邦内の放射線関連施設ではあまり基礎研究が展開されていないようで、DNA二重鎖切断の生成からATMを中心としたDNA損傷情報の伝達、細胞応答の誘導まで、一連の経路についての理解がどの程度進んだのか若干の心配が残った。しかしながら、参加者の興味がどれほどのものであったかは、講義を聴く参加者の態度で窺い知ることができ、大変は興味の中、第1日目の講義が終了できたことは疑う余地もない。
 旧ソ連邦のイメージを持ったまま望んだ今回のロシア連邦訪問であったが、これまでのイメージが全く覆された5日間であった。モスクワ市内は急速な経済成長の中大変な活況を示し、オブニンスクに向かう沿道では、米国内にいるかと勘違いするぐらい大規模なショッピングモールがいくつも並んでいた。また、同規模のモールがいくつか建設中であった。これに呼応するかのように、超高層のマンションと思われる建物がそこここで建築中で、モスクワ市民の生活ぶりが予想できた。いっぽうで、オブニンスクのようなモスクワ郊外の町では、昔ながらの自然に囲まれた生活が営まれ、周囲に広がる広大な原野には西洋タンポポが一面に咲き乱れ、マロニエは小降りの傘のような大型の花をつけ、ポプラは辺り一面を白く塗りつぶすがごとく綿毛を飛ばしていた。また、ライラックの香しいにおいがやわらかな風に乗って運ばれてくるのを感じたとき、ロシアにすむ人々の春を楽しむ気持ちがだいぶ理解できたような気がした。
 長崎大学グローバルCOE『放射線健康リスク制御国際戦略拠点』では、被ばく医療学の確立を目指しての人間教育をその目標に掲げている。今回のバイオスクールでは、極東地域からEU圏まで幅広い地域からの参加者があり、かつて、日本放射線影響学会に所属する若手研究者が自主的に集まって開いていた勉強会、琵琶湖シンポジウム、が思い出された。すでに欧州で毎年開催されている放射線生物学の修士コースでは長崎大学グローバルCOEプログラムもその一部を担当できるよう話を始めているが、このような国内および国外の放射線関連の教育プログラムにより深く関与することがグローバルCOEの目的達成の一つの方法であると改めて強く感じた。教育は人と人との直接的な出会いから始まる。インターネットなどを通じた間接的な方法も一つのやり方ではあるが、やはり人間教育には人が人と出会う機会が必須であり、今後そのような機会を積極的に作っていくあるいは積極的に関与して行くことでプログラムの推進に貢献したいと思う。

(分子診断研究分野 鈴木啓司)
 
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