長崎大学グローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」
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カザフスタン共和国派遣報告 報告書


【派遣者】
山下俊一教授、セリック・メイルマノフ助教、アイヌール・アキルジャノワCOE研究員、熊谷敦史助教
【目 的】 グローバルCOE国際放射線保健医療研究拠点としてのカザフスタン共和国との研究協議、新規共同研究構築、共同研究に係る講義・講演
【派遣先】 セメイ州立医科大学、セメイ州立癌センター、セメイ州立診断センター、セメイ州立精神疾患センター、国立放射線医療環境研究所(以上、カザフスタン共和国セメイ市)、国立カザフスタン医科大学、Al-Farabi Kaz国立大学、私立カザフスタン医科大学、日本大使館(以上、同アルマティ市)
【期 間】 2008年9月5日−9月13日(熊谷は9月20日まで)
【概 要】
≪核実験場周辺地域住民の疾病疫学調査≫
旧ソ連邦時代に400回以上とも言われる核実験が行われたカザフスタン共和国のセメイ(旧セミパラチンスク)周辺地域には、グローバルCOE(GCOE)に先立つ21世紀COEプログラムの始まる以前より、長崎大学は世界に先駆けて日本の国際協力機構(JICA)と共に推進した癌検診活動をはじめとする現地協力を行ってきた。現在も継続して行われている癌検診活動では、長崎大学の指導により1次健診を担当しているセメイ州立診断センターにデータベースが構築されているものの、これまでデータの集計と地域別の解析はなされず、疾病動向も把握されていない。今回、放射線疫学調査の基礎データ解析のためにセメイ州立診断センターのOlga Puja氏(データベース責任者)ならびにセンター長であるジャナット・モルダガリエバ氏と山下教授・熊谷助教が協議し、同調査のための共同解析を行うこととなった。熊谷助教は引き続き、データベース責任者とともに診断センターで解析に必要なデータの抽出、解析を行った。さらに熊谷助教は2次健診担当機関であるセメイ州立癌センター長であるMarat Sandybayev氏、同センターのデータベース責任者であるDauret氏と協議し、1次健診データ集計後に2次健診のデータも引き続き共同解析することで一致した。
≪セメイ州立医科大学・セメイ州立診断センターと長崎大学との遠隔講義システム構築≫
これまでにも、長崎大学は甲状腺超音波検査や細胞診検査等の臨床診断領域において、セメイ現地あるいは長崎での直接指導を行うとともに、通信衛星やインターネットを介した遠隔医療システムを立ち上げ、国際医療協力を行ってきた。被爆地の学生・医師に対する医学教育としての遠隔医学教育としては、チェルノブイリ原子力発電所の被災地域であるベラルーシ共和国のゴメリ医科大学等に対して行ってきた実績があるが、カザフスタン共和国に対しては行われていない。今回、セメイ州立医科大学学長のTolebay Rakhypbekov氏、副学長のMarat Urazalin氏、セメイ州立診断センター長のジャナット・モルダガリエバ氏から、インターネットを介した医学生・医師に対する遠隔医学教育の要請があった。セメイ州立医科大学は医学生に対する公衆衛生学を含め、幅広く一般基礎医学・臨床医学の講義を希望しており、セメイ州立診断センターは医師あるいは臨床検査技師に対する実地医学の講義を希望している。これらの講義を長崎大学から発信することはセメイの医療機関・研究機関との連携を深める意味でも長崎大学GCOEとしても有意義な課題であるため、熊谷助教、セリック・メイルマノフ助教が現地各施設の通信担当者と共同で、長崎の原研資料調査室の横田賢一技術専門職員とリアルタイムで通信しつつ、すでに長崎大学原研と神戸市の隈病院との遠隔会議システムで利用しているシステムを基に、遠隔講義システム構築準備作業を行った。派遣終了時点で、セメイ州立診断センターについては実用可能なレベルまで準備完了したが、セメイ州立医科大学については、ファイアーウォールの調整が困難で、持続的な通信が確保されず実用化レベルには至っておらず、今後の現地との連携によるシステム完成が急がれる。
≪核実験周辺地域における精神疾患についての協議≫
長崎大学は、GCOEの研究課題として在韓被爆者の精神健康調査を2007年から開始している。カザフスタン共和国においても核実験周辺地域住民に精神影響がかねてより指摘されてきたが、これまで系統的な調査がなされておらず、放射線の影響はもとより実態は明らかではない。そこで、2008年8月に長崎・ヒバクシャ医療国際協力会(NASHIM)が受け入れ長崎大学等で研修したJulia Semyonova氏の紹介ならびにセリック・メイルマノフ助教の調整により、セメイ州立精神健康センターを熊谷助教、セリック・メイルマノフ助教が訪問した。同センターの責任者であるナルグル・オスパノワ准教授と、現地での放射線による精神影響に関する研究状況や、長崎をはじめとする世界の放射線被爆地域における精神影響に関して意見を交換するとともに国際放射線保健医療研究としての新規共同研究の可能性について協議し、今後積極的に連携を持つことで一致した。
≪長崎国際医学生奨励賞授賞≫
2008年9月8日、セメイ州立医科大学において同校の2年次学生2名に対して第8回長崎国際医学生奨励賞の授賞式を行うとともに、長崎大学の取り組んできた国際放射線保健医療研究活動について講演を行った。
≪アルマティ市における新規共同研究構築、共同研究に係る講義・講演≫
山下教授、アイヌールCOE研究員はアルマティ市において、国立カザフスタン医科大学、Al-Farabi Kaz国立大学、私立カザフスタン医科大学の研究者と新規共同研究に関する協議を行い、学生・研究者を対象に国際放射線保健医療研究に関する講義・講演を行った。国立カザフスタン医科大学のAkanov Aikan学長は本学原研国際放射線保健部門(原研国際)の前客員教授であり、私立カザフスタン医科大学医学部長であるGabit Alipovは本学原研腫瘍・診断病理学研究分野(原研病理)の元助教である。両者ともカザフスタン帰国後に本学との密接な連携のもと積極的な共同研究体制構築を行っており、今後のさらなる発展が期待される。
 
(永井隆記念国際ヒバクシャ医療センター 熊谷敦史)

セメイ州立診断センター

セメイ州立医科大学正面玄関ホール
(原研腫瘍・診断病理学研究分野の関根教授の写真展示の前で)

セメイ州立医科大学医学部2年次生への講義

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