2007年10月17〜20日、第6回LOWRAD学会(低線量放射線影響学会)がハンガリーのブタペストにおいて開催された。会場となったホテル・ブダペストは、数十年前に現代的な円筒形の建築様式で建てられたことで注目されており、ブダペストの中心地からほど近いキャッスル・ヒルの麓に位置している。会議もホテルの設備も十分に整っていた。
電離放射線の低線量被ばくの生物学的、医学的研究が重要なのは高線量被ばくではみられない影響がみられるためである。注目すべきは、日本での原爆、チェルノブイリ原発事故およびセミパラチンスクの核実験など世界中の核事故や核実験などにより、すでに地球上の何十万人もの人々が低線量放射線被ばくを受けている点だ。同時に人々は環境、医療、職業的活動の場でも低線量被ばくを受け、これらと永久にかかわりをもつことになる。一般人を対象とした防御と職業被ばくについての放射線の安全に関する指針やガイドラインの見直しはまだなお残されている。
また、非常に低い線量域においての線量影響は単調ではないため低線量被ばくの影響評価は難しい。このことは低線量での放射線感受性の亢進、放射線抵抗性の増加の例に見られる。臓器のような複雑な生体システムへの適用は、特に放射線応答のLNTモデルでは低線量効果の説明が難しい。このほかバイスタンダー効果、適応応答、遺伝的不安定性と異質の低線量放射線被ばく後の発現などの従来からの研究にも興味がもたれた。
今回の学会では、臨床及び放射線生物学分野のエキスパートとして世界的に知られているモーリス・テユビアナ博士によるマリーキュリー賞の受賞講演があった。これまでの放射線腫瘍学における特定ストレスと放射線影響研究の進展に関する総括がなされ非常に印象に残るものであった。若手研究者にも参加を勧めたい印象深い有益な学会であった。
本プログラムと抄録は
http://www.osski.hu/lowrad2007/LOWRAD2007_program_book.pdf
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ホテル・ブダペスト |
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モーリス・テユビアナ博士 |
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