長崎大学グローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」
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国際放射線生物学会議(ICRB2008)報告

原爆後障害医療研究施設分子診断学  鈴木啓司


 2008年11月11日から13日まで、インド、ラジャスターン州の州都ジャイプールにおいて、インド放射線生物学学会の主催で、国際放射線生物学会議が開催された。ラジャスターン大学の構内に新しく建設された国際会議場で開催された会議では、基礎研究から放射線治療や放射線管理まで、と銘打った副題がつけられ、米国を中心に世界各国から放射線生物学や放射線主要学の著名な研究者が集まり、活発な議論が交わされた。特にインドではパキスタンとの緊張関係もあって、核テロリズムに対する対応を国家主導のプログラムとして展開しており、このため、放射線防護剤の開発や緊急被爆時の対応につながる放射線生物学的問題について議論されることが多かった。インド国内の研究所や大学からの発表もあったが、諸外国から研究者を招いてその議論の中で国内の研究者を育てようとする意図が明確で、インドにおける放射線生物学会の方向性が明確に示された学会でもあった。
 筆者は、放射線により誘導されたDNA二重鎖切断に起因するDNA損傷応答因子のフォーカス形成についての招待講演を依頼されが、緊急被爆時の線量推定に関わる重要な知見として多くの注目を集めた。筆者の講演がプログラムされたセッションは、国立シンガポール大学のHande博士が主催したものであったが、G1-PCC-FISHによる染色体切断の解析や、DNA損傷修復とテロメアー安定性、COBRA-FISH(同一染色体のマルティカラーFISH)による染色体逆位の検出など、最新のmolecular cytogeneticsの進展を俯瞰できる貴重なセッションであった。
 ラジャスターン州はインドの北西部に位置し、その州都ジャイプールはピンクシティーとして有名なところでもある。勇敢で誇り高きヒンドゥー戦士であるラージプート族の本拠地でもあったジャイプールは、他のインドの主要都市とは違った独特の風土を持っている。またタール砂漠に入り口に位置することから、一日中乾燥した空気が砂塵を巻き上げながら吹いていた。ピンクシティーといってもその色はむしろ明るいレンガ色と朱鷺色の中間ぐらいの色で、いくつもの部屋の窓が並ぶ風邪の宮殿や、インド国内で最大の天文観測器が設置されたジャンタル・マンタルなどがあり、行き交うラクダや原色の赤や黄色の民族衣装が、往時の世界を彷彿とさせる。
 もともと、インドには高自然放射線地区が存在し、ケララ州にある放射線関連研究施設からの研究院の受け入れを行ってきたが、これら研究者をはじめとして多くの放射線生物学研究者が育っていると感じた。もちろん、その多くは、純粋な基礎研究を指向しているわけではなく、他国の基礎研究によって得られた知見をもとにした応用研究を推進しているわけであるが、トランスレーショナルリサーチの重要性が声高に叫ばれて久しい日本の放射線影響研究に不足している分野であることも事実である。今後の、放射線基礎生物学の推進においても、こういった応用を意識した研究を積極的に取り入れる必要があるとあらためて感じた会議参加であった。
 
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