長崎大学グローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」
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2010年米国消化器病週間 報告

大学院医歯薬学総合研究科原研病理 七條和子

 2010米国消化器病週間 Turning Science into Medicine (2010 DDW; digestive disease week) が、2010年5月1日から5日までアメリカのルイジアナ州ニューオーリンズにあるErnest N. Morial コンベンションセンターでLawrence S. Friedman, MD DDW Council Chairの主催で開催された。
 私はこの地には何度か訪れている。2005年8月25日にフロリダ州の南部先端に上陸、通過したハリケーン・カトリーナは北方に進路を変更し、勢力をカテゴリー5に拡大した。そして、8月29日にこの都市の近くのメキシコ湾沿岸に再上陸した。ニューオーリンズ市は、陸上面積の8割が水没した。観光地として有名なフレンチ・クオーターやガーデン地区などは水害をまぬかれたものの、アフリカ系アメリカ人が多く住むロウワー・ナインス・ワード、ポンチャートレイン湖に面した高級住宅街レイクビュー地区を中心に壊滅的な被害を受けた。現在、Ernest N. Morial コンベンションセンターは数100万ドルが投資され改築されていた。また、町の所々にハリケーンのつめ跡が残っていたのが印象的であった。
 DDWはこの領域では世界で最も大規模な学会であり、その選択性の多さにより、参加者にあった学会プランが立てられる。1) American Association for the Study of Liver Disease (AASLD Research Highlights: Advances in Hepatology _ The Year in Review), 2) AGA Institute (AGA Institute Spring Postgraduate Course), 3) American Society for Gastrointestinal Endoscopy (ASGE Postgraduate Course), 4) Society for Surgery of the Alimentary Tract (SSAT Postgraduate Course) と4つの学会から成り、それぞれの卒後医学教育がこの期間に開催されている。消化器病の臨床あるいは研究、臨床問題に対する異なったアプローチの探索に対して一つの側面に焦点をあてたセッションを選ぶことができる。この分野において患者医療、研究、学究的な世界あるいはほかの場所で医療に携わっていようとDDWでは必要に応じた教育が得られるだろう。
 あらゆる消化器病研究と臨床応用を網らした400以上のセッションと4000題のポスター発表は、それぞれ1000を超える特別講演と口頭発表を含む。レクチャー、コラボ的小規模グループの討論、あるいは実践的な技術構築のためのワークショップでは自分のニーズに最も適する学びの体験ができる。胃腸病学、GI内視鏡検査、GI外科、肝臓学に携わる15000人以上の世界中の仲間たちとアイデアを交換する。展示会では最新のGI製品とサービスを見ることができる。
 AGA State-of-the-Art Lectureで“INTESTINAL STEM CELL AND CANCER”があった。幹細胞とがんについて、今ホットな研究課題である。消化器の中でも腸管では幹細胞の腺管における細胞の位置が決まっている。そのマーカーとなるたんぱくの同定に世界のラボがしのぎを削っている。今回、いくつもの幹細胞マーカーが同定されていたことが新しい知識として得られた。さらに、一つの幹細胞から実際に腺管が構築されるin vitroの画像発表には、とても感銘をうけた。ここでもやはり日本人研究者の仕事が輝っていた。消化管、特に胃腸管の領域では日本は世界のトップレベルである。アメリカに来て、日本人の消化管の研究者とお話しすること、また彼らの発表を聞くこともまた楽しみである。
 私の発表演題は ”DNA Damage Response in Aberrant Crypt Foci of Radiation Colitis as Anti-cancer Barrier in Early Tumorigenesis”「放射線大腸炎の初期腫瘍発生における抗癌バリアとしての変異腺管DNA傷害反応」だった。クラゲ蛍光たんぱく遺伝子導入したネズミの骨髄を他のネズミに移植して放射線腸炎を作り、その修復過程において骨髄由来の腸の細胞が発現する。さらに放射線腸炎は治りにくい病態なので変異した腺管が出現し、発がんの危険性がある。その発がん過程の前段階でDNA障害反応が関係しているというとだ。放射線による傷害は遺伝子の傷害なので最終的には発がんに関わっている。一方、幹細胞移植が実際に臨床応用され始めている。日本でもポピュラーになった再生医療である。まさに、学会のテーマTurning Science into Medicine、”科学から医療へ“である。
 来年、DDW 2011 は2011年5月7日から10日までアメリカのイリノイ州シカゴMccormick placeで開催される。
 
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