長崎大学グローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」
長崎大学
JAPANESE ENGLISH
活動 Activities
ホーム活動海外学会参加報告>第46回アメリカ臨床腫瘍学会総会報告
 
海外学会参加報告
 
 
第46回アメリカ臨床腫瘍学会総会報告

分子治療学研究分野 塚崎邦弘


2010年6月4日から8日にシカゴのMaCormick Convention Centerで行われた第46回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会に原研内科から福島講師、大学院生の糸永先生と参加してきました。昨年はH1N1ウイルスによるインフルエンザで参加者が少なかったのですが、今年は約3000の発表、3万人を超える癌研究者の参加があり、米国についで日本からの参加者が多かったそうです。今年度の会長であるミシガン大のDr. Blayneyは”Advancing Quality through Innovation“のキャッチフレーズのもとに、がん研究・診療の標準化に向けたプログラムを多く組んでいました。
Plenary sessionでは、メラノーマに対する抗CTLA-4抗体(ipilimumab)の効果を検討した研究で、GP100(ペプチド抗原)併用の有無にかかわらず、抗腫瘍効果の増強と全生存割合の延長を認めた第3相試験結果と、EML4-ALK陽性の肺がんに対するALK阻害剤の第1〜2相試験の有望な結果が注目されました。

私が専門とする造血器腫瘍については264の演題があり、集学的治療法がある程度確立しているこの領域に対する臨床研究の流れとしては、標準療法に組み込まれた薬剤の用時・用量の工夫、疾患単位の予後をかえた分子標的薬の改良、難治性疾患に対する新規の薬剤や集学的治療法の早期開発、予後が改善した疾患の集学的治療法での減量による至適化など多岐にわたっていました。

その中でも注目されたものとしては以下が挙げられます。
  • 初期治療後の濾胞性リンパ腫と多発性骨髄腫に対する、それぞれ抗CD20抗体のリツキシマブと免疫調整薬のレナリドマイドによる寛解維持療法の有用性が示された。
  • bcr/abl陽性慢性骨髄性白血病の治療戦略を一変したイマチニブに続いて開発されたチロシンキナーゼ阻害剤のダサチニブとニロチニブは、ともに初発CMLに対するイマチニブとの比較試験で有用性が示された。
  • ホジキンリンパ腫で早期FDG・PETが陽性の場合のみに治療増強する前向コホート研究により、治療減量の有用性が示唆された。

毎回のことながら、標準治療を書きかえる第3相試験結果と今後が期待される早期試験結果に圧倒されるASCO総会でした。1年後のASCOはまたシカゴで開催されます。

 

分子治療学研究分野 糸永英弘


 今回、2010年6月に開催されたAmerican Society of Clinical Oncology 2010(ASCO2010)に参加する機会を与えて頂きました。

 ASCO2010はイリノイ州シカゴで開催されました。シカゴのMcCormick Placeという全米最大のコンベンションセンターで開催され、参加した人数は4万人を超える巨大な学会となりました。テーマは造血器腫瘍のみならず、固形癌も扱われるため、世界中から腫瘍に携わる医師が集まりました。

 造血器悪性腫瘍に関して、ASCO2010では3つのことが大きなテーマとなっておりました。
 1つは「未治療慢性骨髄性白血病(CML)に対するdasatinib、nilotinibの第3相試験」です。BCR-ABL融合蛋白に対しての分子標的薬であるimatinibに対して、その次世代薬であるdasatinib、nilotinibはその優位性が示されました。今後はdasatinib、nilotinibを第一選択薬とする動きが出てくることが期待され、分子標的治療薬のモデルであるCMLの治療の進歩が続いていることを改めて印象づけられました。
 新規薬剤であるbortezomibやlenalidomide等による多発性骨髄腫の治療成績の改善も注目を集めていました。本邦では再発・難治症例のみに使用が制限されているbortezomib、lenalidomideの第1選択薬としての使用や、維持療法が検討されておりました。それらはprogression free survivalを延長するという有望な結果を示していました。一方で、大量化学療法を用いた自家末梢血幹細胞移植の役割が失われつつある印象もあり、今後多発性骨髄腫の治療戦略は大きく変わっていくことが期待されます。
 最後は、「高齢者の急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)に対しての治療の開発・検討」です。脱メチル化薬であるazacitidineやdecitabine、第2世代のプリンヌクレオシド系代謝拮抗剤であるclofarabine等の新規薬剤の開発に関する発表が目立ちました。高齢者のAMLやMDSの治療戦略の確立が重要な課題となっていることをあらためて感じました。

 今回のASCO2010では最先端の臨床研究に触れることができ、とても実りの多い学会となりました。医学を進歩させようとする多くの研究者たちのエネルギーに刺激を受け、私自身も研究への気持ちをあらためて奮い立たせる機会となりました。

 
home
ご挨拶
概要
組織
プロジェクト
国際放射線保健医療研究
原爆医療研究
放射線基礎生命科学研究
活動
セミナー
シンポジウム
ワークショップ・講演会
学術交流
e-Learning・遠隔教育
海外学会参加報告
WHOとの連携事業
出版
業績
人材募集
ニュース
一般の皆さまへ
放射線診療への不安に
お答えします。
放射能Q&A
プロジェクト紹介
(長崎大学広報紙)-PDF9MB
チェルノブイリ原発訪問記
大学院生 平良文亨
関連リンク
サイトマップ