今回、2010年6月に開催されたAmerican Society of Clinical Oncology 2010(ASCO2010)に参加する機会を与えて頂きました。
ASCO2010はイリノイ州シカゴで開催されました。シカゴのMcCormick Placeという全米最大のコンベンションセンターで開催され、参加した人数は4万人を超える巨大な学会となりました。テーマは造血器腫瘍のみならず、固形癌も扱われるため、世界中から腫瘍に携わる医師が集まりました。
造血器悪性腫瘍に関して、ASCO2010では3つのことが大きなテーマとなっておりました。
1つは「未治療慢性骨髄性白血病(CML)に対するdasatinib、nilotinibの第3相試験」です。BCR-ABL融合蛋白に対しての分子標的薬であるimatinibに対して、その次世代薬であるdasatinib、nilotinibはその優位性が示されました。今後はdasatinib、nilotinibを第一選択薬とする動きが出てくることが期待され、分子標的治療薬のモデルであるCMLの治療の進歩が続いていることを改めて印象づけられました。
新規薬剤であるbortezomibやlenalidomide等による多発性骨髄腫の治療成績の改善も注目を集めていました。本邦では再発・難治症例のみに使用が制限されているbortezomib、lenalidomideの第1選択薬としての使用や、維持療法が検討されておりました。それらはprogression free survivalを延長するという有望な結果を示していました。一方で、大量化学療法を用いた自家末梢血幹細胞移植の役割が失われつつある印象もあり、今後多発性骨髄腫の治療戦略は大きく変わっていくことが期待されます。
最後は、「高齢者の急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)に対しての治療の開発・検討」です。脱メチル化薬であるazacitidineやdecitabine、第2世代のプリンヌクレオシド系代謝拮抗剤であるclofarabine等の新規薬剤の開発に関する発表が目立ちました。高齢者のAMLやMDSの治療戦略の確立が重要な課題となっていることをあらためて感じました。
今回のASCO2010では最先端の臨床研究に触れることができ、とても実りの多い学会となりました。医学を進歩させようとする多くの研究者たちのエネルギーに刺激を受け、私自身も研究への気持ちをあらためて奮い立たせる機会となりました。
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