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ラドン温泉をご存じでしょうか。鳥取県の三朝温泉、兵庫の有馬温泉などが有名です。これらの温泉には放射性物質が含まれていますが、放射線が出ているから体に悪いかと言うと、そんなことはありません。逆に有馬温泉などは病気を治す湯治で有名です。
実際、三朝温泉の住人とその他の地域の住人とでがんの発生率を比べた研究者がいますが、その結果は、三朝温泉の住人の方ががんになる人が少なかったということでした。このことから、「少ない量の放射線は体にいいんだ」と早急に決めつけることはできませんが、少なくともある程度の量の放射線ならば、体に悪くない、ということが分かっていただけるでしょう。
放射能の量を表すのはベクレルと呼ばれる単位です。放射線はアルファ線、ベータ線、ガンマ線などがあり、同じ1ベクレルでも、それぞれ人体に対する影響力が異なります。そこで、その特徴を加味し、放射線を測る場合は人体に対する影響力を表す単位、シーベルトに統一して使います(1シーベルトは千ミリシーベルト)。
私たちは、年間どのくらいの放射線を自然に受けているのでしょう。地球上に住んでいる以上、だれでも年間2.4ミリシーベルトの放射線を被ばくします。といっても、だれもこの自然放射線で害を受けてはいません。
一方、高い線量の放射線は確かに人体に害を与えます。500ミリシーベルトを超えると放射線の影響があります。また、発がんの心配が出てきます。
ちなみに、科学技術庁が決めた年間許容量は50ミリシーベルトです。これは、放射線の害から守るために、法的に定められた値です。
放射線の1回照射量と身体影響(mSv=ミリシーベルト)
250mSv以下 |
身体症状なし |
500mSv |
白血球一時減少 |
1000mSv |
吐き気、おう吐 |
1500mSv |
50%の人に放射性宿酔(二日酔いのような状態) |
2000mSv |
5%の人が死亡 |
4000mSv |
30日間で50%の人が死亡(半致死線量) |
7000mSv |
100%の人が死亡 |
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原爆やチェルノブイリ原発事故などで、多くの方が放射線により被災しました。そのため、私たちにとって、放射線は恐ろしいものといったイメージがあります。しかし、案外その実態について、私たちは知らないのではないでしょうか?
大切なことは寺田寅彦の言葉にもあるように「ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることがむずかしい」ということです。「正当に怖がる」ために、まず正確な知識を得て、どのように対処すれば安全なのかを知ることが重要だと思います。 |
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