長崎大学グローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」
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放射能Q&A - Q.6 A A
 
 
Q
6. 原爆の威力を教えてください。
A
  核分裂で破壊力が増大し、放射線を多量に放出します。
 
 1945年3月10日、334機の米軍のB29爆撃機が東京上空に飛来しました。東京大空襲です。東京の下町は焦土に一変し、約10万人が死にました。爆弾は油性ガソリンの入った焼夷(しょうい)弾だったので、爆発だけでなく、火災による死者が多数出ました。
 長崎原爆は13キログラムのプルトニウムを装備した重さ4.5トンのものでした。B29爆撃機「ボックス・カー」が投下しました。実際に核分裂をしたプルトニウムは10%の約1キログラム。原爆による死者は7万人以上でした。原爆と通常爆弾はどこが違うのでしょう。
 最近、新聞記事などで核実験の規模を表す言葉に「キロトン」という単位をよく目にします。これは爆薬を用いた代表的な通常爆弾に使われるTNT(トリニトロトルエン)爆薬1キロトンの爆発で放出されるのと等しいエネルギーを表します。
 東京大空襲で投下された爆弾は約8千個で、計約2キロトンでした。一方、長崎原爆の威力を爆風や熱線の強さから計算すると、21キロトンと推定されます。原爆1発の威力は通常爆弾より、はるかに大きいのです。どうしてでしょう。
 一言で言うと、通常爆弾が化学反応を利用しているのに対し、原爆は核反応であるということです。


 爆弾は爆薬を発火させて爆発させます。爆薬は短時間に燃焼し、多量の熱とガスを発生させます。ガスは熱によって急激に膨張します。熱は火災ややけどを起こし、ガスの膨張は建物を破壊します。爆薬の燃焼によって得られるエネルギーは化学エネルギーです。


 一方、原爆はウランあるいはプルトニウムの原子核に中性子を衝突させ、2個に割れるときに生じるエネルギーを破壊力として使います。原爆に使うウラン235の原子核は92個の陽子と143個の中性子が結合して一つの塊となっています。プルトニウム239の原子核は94個の陽子と145個の中性子が結合しています。原子力エネルギーはこれらの陽子と中性子の結合エネルギーとして考えられています。中性子が原子核を2つに割ることを核分裂といいます。このときの結合エネルギーが原子力エネルギ−になるのです。

 原子力エネルギーは高温の熱と熱線を出します。熱線とは赤外線を含む光線です。物質を通して伝わる熱は周りの空気を膨張させ、爆風を起こします。この点では爆薬も原爆も同じですが、ウランの核分裂から出る原子力エネルギーは同じ重さの爆薬の化学エネルギーの約百万倍あります。これが東京大空襲と長崎原爆の違いの一つです。もう一つ違うのは、原爆は放射線と放射性物質を多量に放出する点です。原爆のエネルギーは熱線が35%、爆風が50%、放射線が15%の割合で放出されました。


 52年11月には、アメリカが世界で初めて水爆実験に成功しました。水爆は2個の水素原子(重水素)を核融合させてヘリウム原子に変える時、発生する原子力エネルギーを使うものです。1個のヘリウム原子の重さは2個の水素原子より軽く、核融合によって減った重さがエネルギーに変わるのです(図上)。原子は簡単には変えることができませんが、水素原子の核融合は、原爆によって非常に高温の状態をつくると起こせるのです。水爆は原爆が起爆剤になっているわけです。
 水爆は原爆の百〜千倍の威力です。水爆の強さを示す単位には通常、キロトンの千倍のメガトンが使われます。科学の進歩によって、より殺傷能力の高い爆弾が生まれていることも事実なのです。
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