長崎大学グローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」
長崎大学
JAPANESE ENGLISH
一般の皆さまへ Publicity Activities
ホーム一般の皆さまへ放射能Q&A>Q.11
 
放射能Q&A - Q.11 A A
 
 
Q
11. どうして放射線でがんが発生するのですか。
A
  当たるとDNAに傷ができ、細胞が無秩序に増加する確率が高くなります。
 
 「放射線」という言葉を聞いて連想する病気は何でしょうか。多くの人がまず思い浮かべるのは「がん」だと思います。そのうち、ある人は放射線はがんを起こす怖いものと考えるでしょうし、別の人はがんを診断・治療する時の力強い味方と考えるかもしれません。
 どちらの考え方も間違いではありません。放射線はがんを発生させますが、医療面では逆にがんの診断や治療に役立つという両方の側面を持っています。身体のためになる薬でも多量に服用すると身体に悪いのに似ています。
 私たちが検診などで受ける胸部レントゲンや胃腸透視は放射線(X線)の物を透過する性質を利用したものです。1回で0.3から4ミリシーベルトの被曝(ひばく)をします。私たちが日常生活で受けている自然放射線が年間約1.1ミリシーベルトですから、検査時に年間放射線の約3分の1から4倍の被曝をすることになるわけです。
 それでは、レントゲン検査を受けることで、がんが発症するのでしょうか。答えは「ノー」です。これまでのところ、レントゲン検査によりがんの発症が明らかに増加したという医学的報告はありません。日本の法律では、1年間の被曝許容量が50ミリシーベルト以下に設定されていますが、その基準よりずっと少ないわけです。
 少ない被曝量で安全であっても、より多くの被曝によってがんが増えるのも事実です。長崎の被爆者を対象にした調査から、被曝した放射線の量が多かった人に白血病、甲状腺(せん)がん、乳がん、肺がん、胃がん、皮膚がん、大腸がん、唾液腺腫瘍(だえきせんしゅよう)の発症が多いことが分かっています。また、放射線ががんを引き起こすことは動物を使った実験でも確かめられています。
 7千ミリシーベルト以上被曝すると急性障害で死亡します。
 この大量の放射線が細胞を死滅させるという点を逆に利用して、がんの治療が行われています。ただし、正常な組織が傷つかないようにするために、放射線がまっすぐ進む特徴を生かし、がん細胞だけに放射線が当たるようにします。がん治療には、約6万ミリシーベルトの放射線が用いられます。
 それでは放射線によりどのようにしてがんができるのでしょうか。放射線ががんを引き起こす仕組みを多くの科学者たちが研究しています。まだ不明な部分が多いのですが、いくつか分かってきたことがあります。
 ごく簡単に説明すると、身体を構成している細胞にはデオキシリボ核酸(DNA)という物質があり、生命を維持するのに必要なさまざまな物質をつくる鋳型として働いているわけです。放射線が当たった細胞ではDNAが切れてしまいます。正常な細胞ではDNAが切れてもすぐ修理されるのですが、ごくまれに間違って修理されることがあります。間違って修理された部分が、細胞が増えるために重要な所だった場合、細胞は無秩序に増え始めてしまいます。これが「がん化」です。今まで快適に走っていた車が放射線という事故で、突然アクセルがかかりっ放しになったり、ブレーキが利かなくなったりした状態と考えてよいでしょう。
 放射線以外にも化学物質や紫外線などが、がんを誘発する外因として知られていますが、いずれも同じような原因で起こっていると考えられます。したがって、放射線で起こるがんを調べることは、自然に発症するいろんながんのモデルとして治療や予防に役立つ可能性があり、将来のがん撲滅への大きな手がかりが得られると期待されています。

※シーベルト
人が放射線を受けたとき、その影響の度合いを測るものさしとして使われる単位

  放射能Q&Aトップへ>>

 
home
ご挨拶
概要
組織
プロジェクト
国際放射線保健医療研究
原爆医療研究
放射線基礎生命科学研究
活動
セミナー
シンポジウム
ワークショップ・講演会
学術交流
e-Learning・遠隔教育
海外学会参加報告
WHOとの連携事業
出版
業績
人材募集
ニュース
一般の皆さまへ
放射線診療への不安に
お答えします。
放射能Q&A
プロジェクト紹介
(長崎大学広報紙)-PDF9MB
チェルノブイリ原発訪問記
大学院生 平良文亨
関連リンク
サイトマップ