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核エネルギーが使われる理由を考えてみましょう。核エネルギーは発電に利用されます。電力需用が増すと、新しいエネルギーを見つける必要があります。火力発電に必要な石油や石炭のような化石燃料は量が限られていることが現実として分かってきました。
化石燃料の燃焼には、最近2つの問題が大きく取り上げられるようになりました。一つは酸性雨の問題です。石炭や石油を燃焼させると、含まれている硫黄が酸化し、また燃焼するときの高温で空気中の窒素が酸化します。硫黄酸化物と窒素酸化物が大気中の水分と結合して酸性雨となって降ってきます。ドイツでは森林の54%が酸性雨の被害を受け、ヨーロツパでは立ち枯れした山が目立つようになったと報告されています。
もう一つの問題は地球温暖化です。燃焼によって発生した炭酸ガスが大気中に停滞すると地球からの熱の発散を止め、地球を暖かくします。気温が上昇すると、気象条件が変わり、雨の降り方も変わります。最近、世界の各地で集中豪雨や干ばつが発生しているのはそのためと考えられています。
このような背景で核エネルギーが登場したのです。しかし、以前考えられていたように核エネルギーはクリーンで安全で、ほかのエネルギーに比べて安いということは言えなくなりました。1979年、アメリカのスリーマイル島で原発事故が起こり、86年のウクライナ・チェルノブイリでの原発事故は世界中に放射性降下物(フォールアウト)を降らせました。
小さな事故や故障による運転停止があったり、運転コストが予想以上にかかったり、放射性廃棄物の処理にかかる費用も少なくないことが分かりました。さらにウラン埋蔵量の限界も分かりました。
総発電量に対する原子力の割合
フランス |
78% |
スウェーデン |
42% |
韓国 |
40% |
スイス |
38% |
ドイツ |
30% |
イギリス |
26% |
アメリカ |
21% |
カナダ |
17% |
中国 |
0.3% |
日本 |
31% |
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現在、国内の総発電量に対する原子力発電の割合は31%です。フランスの78%に比べて少ないものの、発電量は無視できません。スウェーデンでは91年の議会で、2011年までに原子力発電所の全廃を決定しましたが、今のところ原子力に代わるエネルギーを見いだせないでいます。
もし、原子力発電に頼らなければならないのなら、核エネルギーをウランにだけ頼らない道を見つけようというのが「核エネルギー再利用」です。自然界の天然ウランはウラン235が0.7%、ウラン238が99.3%の混合物で、そのうちウラン235のみが核分裂してエネルギーを放出します。
したがって、核燃料には濃縮してウラン235の濃度を高めたものを使います。核燃料のウラン235が核分裂したとき発生する中性子が不純物のウラン238に吸収されると、ウラン238はプルトニウムになります。このプルトニウムも核分裂をしますので、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出すれば新しい核燃料になります。
使用済み核燃料からプルトニウムを抽出することを再処理といい、プルトニウムを含む新しい核燃料で原子力発電をすることを核エネルギー再利用といいます。核燃料のリサイクルといってよいでしょう。
核廃棄物には、高レベル廃棄物と低レベル廃棄物があります。高レベル廃棄物は、再処理の過程で発生します。使用済み核燃料には、ウランの核分裂によってできた核分裂生成物が入っています。これは強い放射能を持っています。
使用済み核燃料は金属管に入れられていますので、機械的に細かく切断し、硝酸溶液で溶かします。これに必要な薬品を入れて化学的に分離します。最初に出てくるのが核分裂生成物で、高レベル廃液と呼ばれます。これをガラス状に固め、ステンレス容器に入れ、地下数百メートルの安定した地層の中に保管放射能が非常に高く、人が近づくことができないので、分厚いコンクリートの壁の向こうで機械を使って遠隔操作します。
低レベル廃棄物は原子力発電所の運転や保守の作業によって発生する放射能に汚染されたものをいいます。気体状のものはフィルターを通して吸着させます。液体状のものは濃縮してアスファルトで固めます。個体状のものは手袋やティッシュペーパーのたぐいです。低レベル廃棄物はドラム缶に詰めて保管します。放射能は直接手で扱えるものから、多少、放射線の遮へいが必要なものまでまちまちです。 |
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